リギング

いよいよリギングです。
帆船模型作りで一番楽しい工程だと聞いていましたが、私には一番難しい工程でした。
その訳は、@ロープの太さをいくらにすれば良いのかが私の入手した資料にはどこにも書いていなかったこと。
A動索の終端はビレイピンに止めますが、その場所が先に張った縄梯子の内側にあり、手が入らなことです。
特にロープの太さは、細いと迫力に欠けるし、太すぎると玩具っぽくなります。
店の人に聞いたり展示会で見たりしましたが、結局種々の太さのロープを張ってみて
自分の感覚で決めました。

参考のために使用した糸をまとめておきます。

直径(呼び) 直径(実測) 長さ 備考
黒糸 1.5(ミリ) 1.5(ミリ) 1.5(m) 凧糸にプラカラーで黒塗装
1.0 0.85 MANTUA社(ケバ処理済)
0.75 0.65 20 MANTUA社
0.5 0.45 30 MANTUA社
ベージュ糸 0.75 0.7 15 AMATI社
0.5 0.4 70 AMATI社
0.25 0.2 MANTUA社
茶糸 0.25 0.25 10 キットに付属
白糸 #60 ミシン糸

*長さに関しては図面で予測したよりはるかに多くいりました。
キットに付属の糸を使っていたら必要量の半分も賄えないところでした。

先ずジブブームに、チエンを張ります。
チエンを留めるアイボルトは0.5ミリの真鍮線で作ります。
チエンは節約して使いましたが最終的には足りなくなったので、東急ハンズでアクセサリー用のものを買いました。
静索を張る前に、ブルワークのすぐ内側で甲板に固定される動索を先に固定しておきます。
シュラウドを張ります。
長さを決めるために、銅線で作ったコの字型の冶具を使います。
黒糸は0.75です。
トップシュラウドも0.75で、トゲルンシュラウドのみ0.5です。
白糸はミシン糸を使いました。化繊より綿のほうが扱いやすいことがわかりました。
デッドアイはプラスチックのため取り付け部の強度を増すために瞬間接着剤を塗布してあります。
ラニヤードは0.5の黒糸で、片側の5本を借り止めしてから反対側の5本も借り止めして、マストが垂直かどうか確認します。
マストは接着していないので左右のラニヤードの締め具合で調整できます。
ラニヤードの仮止めは、デッドアイの最後の穴に、糸を通した上から爪楊枝を差込むと簡単です。

シュラウドの次はステイです。
ロアマストのステイは迫力を出すため1.5の凧糸をプラカラーの黒つや消しで染めたものを使いました。
トップマストは1、トゲルンは0.75、ロイヤルステイのみ0.5の黒糸を使います。
1.5以外はケバ処理済のイタリア製黒糸を購入しました。
1ミリの真鍮線に黒塗装して、リンチピンとしてデッドアイのすぐ上に付けます。
リンチピンの取り付け完了です。
キットに付属の0.25茶の糸でラットラインを結びます。
すべて一様に少したるませたかったのですが、うまく行きませんでした。
同様にメインマスト、ミズンマストの順で静索を張ります。
シュラウドやバックステイよりもステイは弱く張らないとマストを前側に曲げてしまいます。
そしてヤードを引っ張る動索のブレースは更に弱く張らないと、先に張ったステイをたるませることになります。
そのため、シュラウドは結構強く張ることが必要だと判ります。
・・・もっとも私の場合はデッドアイがプラスティックで強度に問題があるため恐る恐る張って行くという作業になり十分な張力をかけることが出来ませんでした。
ジブブームからキャットヘッドの先を通って船体の側面に張る静索です。
たるまないように張るため、ジブから始めて、最後に船体側の留め位置を決めます。
この状態で船体側にピンと張り、船体にアンカーボルトの留める位置を決めて穴を開けます。
錨はプラスチック成型品のため引けが有り、プラモ用パテで修正し、バリをとってから塗装しています。
錨の固定法は迷ったのですが、キャットヘッドのウインチは作れなかったため、錨の鎖を別の鎖でキャットヘッドに釣るし、錨の先はロープでボラードに固定しました。
いよいよ動索にかかりますが、付属の滑車には単滑車と二連滑車のみで、単滑車の両端に取り付け環の付いた物が無いため、単滑車を改造して作りました。
左上は0.5ミリの真鍮線で作り、左下の単滑車に穴を追加したところにくぐらせて固定します。
右側が完成でこの後黒で塗装をします。
ヤードを取り付けます。
リフトでヤードを吊るすのですが、水平に固定するため、別の糸で船体を迂回してヤードを仮に止めます。
水準器を使って水平を出してから、リフトを張って水平に固定しました。
フォアマストのヤードが終わりメインマストのロアヤードに取り掛かったところです。
リフトに使った動索の端は、マストのビレイピンに巻きつけて固定します。
ビレイピンへの固定作業が困難を極めました。
奥の方にあるビレイピンの場合最悪でした。
奥のファイフレールに動索を固定しています。
先の曲がったピンセットを2本駆使して糸をピンレールに巻きつけて、木工ボンドで固定します。
糸の先を、木工ボンドを水に薄めたもので浸し、鉛筆に巻きつけ、半乾きの状態で外します。
半乾きのロープを、ピンセットで形を整えてビレイピンに掛けます。
そのままだとロープが跳ね上がってしまうので、竹串をロープの中に差込んで、下側に押さえて固定し、ボンドで固定します。
ファイフレールに動索を固定し終わったところです。
ミズンマストまでヤードを取り付けました。
ヤードはそれぞれチェンでマストから吊るされており、これをハリヤードと呼ばれる動索で上下させることが可能です。
ミズンマストのハリヤードを後ろから見たところです。
ブームを左右に引っ張る滑車です。
実船の写真を見て、滑車の端はブルワーク外に固定し、ロープの端はブルワークの穴から船内に導入しました。
そのロープの端をどこに止めるのかが判らず、HPの作者にメールで問い合わせて判明し、甲板に“クリート”と呼ばれるロープ留めを自作し固定しました。
ミズンマストのリフトロープの端は後部船室の横のファイフレールに留めます。
ロープの余分を束ねたものを外側に垂らしたのですが、実際は船室とファイフレールの間に立って操作するのであれば内側に垂らすのが正解だったかも知れません。
どちらにしてもファイフレールと船室の間が狭すぎて人が通れるのか不思議です。
ヤードの左右の角度を操作する動索:ブレース(左図)を張ります。
メインマストのヤードに張ったブレースです。
これもロープ端の処理が厄介で、ブルワーク内側に留め位置があるため、先に固定したボートは一旦外し、ピンセット2本の遠隔操作で何とか留めることが出来ました。
写真は、ロープ端を束ねたものを爪楊枝で押さえ、セロテープで床に固定して乾燥を待っているところです。
その部分を上から見ました。
船主側ダビットのロープ処理です。
ダビットや手すりは、実船では白塗装ですが、模型では真鍮の色が、木材の茶色と良く合うためそのままにしました。
ボートダビットです。
リギングの完成です。

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